「いざ…学校へ!!!」
よーし!っと気合を入れて家を出た。
今日の私はなんだか戦いに出陣するような気分……
その原因は……この鞄に入っているチョコ…
「おはようございます」
そう言って生徒会室の扉を開くと珍しく皆が揃っていた。
……が、
「おはよ。千鶴」
「おいこら席を立つな!!」
「えっと……すごい量ですね…」
机の上には大量の書類。
そしてそれを囲むように席に座っている生徒会メンバー達。
「そうなんだよ…これだけの数、今日中に終わるわけねぇって…」
げんなりと項垂れる平助君に土方先輩がこの間とはうって変わってニヤリと笑う。
「終わるまでは誰一人帰さねぇからな……覚悟しとけよ?」
笑っているのに目は笑ってない……誰が見ても鬼だ…
「しかし……よくこんだけ溜まったもんだな」
「お前等がサボるからだ…」
書類の山を見ながら呆れと感嘆の混じった原田先輩の言葉に返したのは斎藤先輩だった。
でもこの間のように苛立った様子はなく…
「とにかく早く仕事を片付けろ。でないと菓子は無いぞ」
「菓子?」
妙に上機嫌の彼が言ったことが引っかかった。
と、それに答えてくれたのは永倉先輩だった。
「そうなんだよ!この書類が全部終わらないと千鶴のチョコ無しとか言いやがんだよ、この鬼共は!!!」
うがーと立ち上がって吠える永倉先輩に背後から斎藤先輩が頭を叩いた。
「暴れるな。書類が倒れる」
「くそぉ…」
「なんでそんなことに……」
「あいつ等のやる気を出させるためだ。もう手段は選んでらんねぇんでな」
ククッと笑う土方先輩。
それを見ていた沖田先輩が……唐突にこんなことを言い出した。
「ねぇ…折角やるんだったらさ、勝負しない?」
「勝負?」
ニヤニヤと楽しそうな沖田先輩。はっきり言って嫌な予感しかしない……
「そう。この書類を人数で分けて一番早く終わった人に千鶴ちゃんのチョコとデート権なんてどう?」
「デートってなんですか!?」
「いいじゃない。折角のバレンタインなんだしさ」
完全に他人ごとな沖田先輩に……あろうことか皆が同意し始めた…
「それいいな!俺賛成ー!」(平助君)
「おいおい…勝手に決めるのはどうかと思うぞ?ま、やるなら俺は参加するけどな」(原田さん)
「チョコに加えデートとは…こりゃ負けるわけにはいかねぇよな!」(永倉さん)
「え…ええ!?」
ノリノリの四人に困り果てて助けを求めると…
「それで仕事が終わるなら…まぁ認めてやってもいいな」
「土方さん!?」
「………大丈夫だ。俺か土方さんが勝てばいい」
「そ、そう言う問題ですか…?」
「あれ?一君は千鶴ちゃんとのデート権を土方さんにとられてもいいの?」
「総司…俺は…」
「……訂正する。俺が勝つ」
あはは。分かりやすいなぁと笑う沖田先輩と溜息をつく土方先輩。
なんだか…空気がおかしくなってきたような……
「……とりあえず始めるぞ」
「ちゃんと平等に分けてくれよ」
「当然だ」
目の前でドンドン勝負の準備が出来ていく。
そして……
「んじゃ始めるぞ。お前が審判だ。ちゃんと見てろよ?」
「は、はい…」
皆、口々に俺が勝つとか負けないとか……そんなにチョコが欲しいですか…?
「皆の分あるのに…」
ポツリとこぼした言葉は紙の擦れ合う音に掻き消された……
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