お父さん……本当にここは日本でしょうか?





我ら現代版新選組!
〜3〜






「おい、大丈夫か?」

その声に顔をあげると、見知った人が心配げに覗き込んでいた。

「ふぁい…」

はいと答えたつもりだった……のだけれど。

「あー、無理っぽいな」

「悪いな、千鶴ちゃん。こんなことになるとは思ってなかったんだ」

始めに覗き込んでくれた人…原田さんの隣から次々と顔を出したのは平助君と永倉さん。
どちらも原田さん同様に心配そうな顔で、

「だ、大丈夫で…っ!」

大丈夫だと告げて立ち上がろうとした足は……まったく力が入らずに、情けなくも震えていた。

「……立てねぇのか?」

そう言って手を伸ばしてくれる原田さんに頷いて、その手を取った。
だけどこんなところに入ってるせいか、はたまた腰が抜けているせいか、全然出られない。

「うぅ……」

ホントに情けなくなってきた……







何故こんなことになったかは、今から二時間ほど前に遡る。






「あれ?藤堂君、どこか行くんですか?」


愛用の木刀をぶら下げた少年に私は声をかけた。


「ちょっとな。つーか俺、この前言わなかったか?藤堂君じゃなくて……」

「あ、ごめんなさい!平助君」

「そうそう」

そう言って無邪気な笑顔を向けてくれるのは、この新選組の一員でもある藤堂平助君。
最年少らしくて、初めて会ったときからほとんど警戒無くよくしてくれる貴重な存在だ。
特に怖い人の多いここでは私の癒し的な存在かもしれない。

「実はさ、今日は左之さんの新ぱっつぁんと追い込みなんだよね〜」

「あ、例の?」

先日、永倉さんが貸付先がかなり渋ってると愚痴をこぼしていた。

永倉新八さんと原田左之助さんもこの組の人間。
よくこの三人が一緒にいるところを見かけるから仲がいいみたい。

「ああ。ってお前も愚痴られたのか?たく……新ぱっつあんは」

呆れたように溜息をつく平助君に私は苦笑いをこぼした。

「でも永倉さん、酔ってたみたいだし……」

「それにしたって女の子に聞かせるようなことじゃないだろ……」


「まったくだな」

その時、突然後ろから声が聞こえた。


「左之さん!」

「原田さん!」


同時に振り向いた私たちがおもしろかったのか、ククッと肩を震わせて笑っていた。

「時間だって言うのに何処へいってんのかと思えば……お邪魔だったか?」

「なっ!何言ってんだよ!俺達は別に……」

からかうように笑う原田さんに顔を赤くする平助君。

「そうですよ。お邪魔だなんてそんなことありません!」

何処に行くのか聞いてただけですと言うと、分かってるってと笑う。
原田さんはちょっと意地悪なお兄さんみたいな人だ。

ちなみに同じ意地悪でも沖田さんのは別格。

「で?千鶴も行きたいのか?」

「え?」

突然告げられた言葉の意味を一瞬理解できなかった。

「ちょっ!何言ってんだよ、左之さん!!」

「いやな。ここに来てからあんま外に出てねぇだろ?学校も終わったら即帰って来いだし」

私は今、前から通っていた学校にそのまま通わせてもらっている。
新選組組長の近藤さんのご厚意によりだ。
その時、いろいろともめたけれど学校だけは…と言う近藤さんの口添えで通えることになった。
近藤さんには感謝してもしきれない。

「だからよ、ちょっとドライブがてらにどうかと思ってよ」

な?っと私を気遣ってくれている原田さんの気持ちが胸にしみる。

「そりゃ…可哀そうだと思うけど……」

仕事なのだ、危険なのだと私の心配をしてくれる平助君。


私はどっちの気持ちも嬉しい。

と、


「いいんじゃねぇか?連れてってもよ」

今度は永倉さんが現れた。

「あいつ等もとうとう年貢の納め時ってことがわかったんだろ?今更危険なことにはならねぇよ」

その言葉に、まぁそうだよな。と平助君も同意する。

「んじゃ、行くか!って、お前さえよければ……だが」

そう言って私の顔を見る原田さん。


そして……

「行きたいです」


そう答えた二時間後、その時の自分を殴りたくなるとは思わなかった。




結局、やることやってからドライブしようと言う話になりさっそく貸付先に行った私たちは突然、強面の集団に襲われた。

先方が用意したものらしく、人通りのない路地裏で争いは激化していく。
最初は車の中で待っているということだったけど、逆に狙われる可能性があるから
車の外……何処か見つかりにくい所に隠れてろと言われ、手短にあった段ボールの中に隠れたのだけど……
暗い段ボールの中、外から聞こえる戦いの音は恐ろしく本当にここは安全な日本なのかと……
夢なら覚めてくれと願わずにはいられなかった。





そして今、未だに抜けた腰が戻らず段ボールの中の私。

そんな私を見て彼らが、


「あのよ、こんな時にこんなこと言うのもなんだが……」

「うん。左之さんの言いたいこと分かるよ、俺」

「ああ。なんつーか……」


『捨てられた犬みたいだ』と思っていたことは知る由もない。





追伸
その後、ドライブなどできるわけもなく組へ帰った私達は……
恐ろしい形相の鬼に腰を抜かすことになった。



もどる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何故かこの話が進んでしまうよ?私はギャグ専門の筈なのに……
あれだ。ネタが思い浮かぶんだ。

好例 ちなみに
※貸付先に出かけるので全員スーツだよ
※平ちゃんは木刀、新ぱっつあんは木製ハンマー(木槌?)、左之さんは凄腕のドライバーだよ(どんな機械もお茶の子だよ)
※ちーちゃんの送り迎えは原田さんがやっているよ(この辺も今度書きたい)
※その後ちーちゃん達は土方さんに怒鳴られ、沖田に「僕も行きたかったのに」と地味に嫌がらせをされるよ(ちーちゃん限定)

2月1日 風舞 葉