私こと雪村千鶴は今、人生でもっとも大変な目にあっています…!!





我ら現代版新選組!

〜1〜









「ふぅん…君が綱道さんの娘さんなんだ?」

「……本当に父親の居場所に心当たりは無いのか?」


私の前に突如現れた二人組。彼等はお父さんの知り合い…らしい。






「だから、何度も言ってるじゃないですか……お父さんの居場所は私の方が知りたいくらいなんです!」


私はさっきから何度も繰り返した言葉をもう一度返事として返した。

私の父、雪村綱道は一ヶ月前から行方不明になっている。
と、言っても有名な教授である父はいつもあちこちに出張をしているため、急にいなくなることもしばしばだった。

しかし出張中は電話やメールを毎日してくれていたのに、この一か月音沙汰がない。
さすがに私も警察に捜索依頼を出そうかと本気で悩んでいたところで……
そんなとき現れたのが彼らだった。

「そりゃ困ったなぁ…。ねぇ?一君?」

「………」

黒いスーツの二人組の片方が、言葉に反してまったく困った素振りなどなく、笑いながらもう一人に言った。

そう、目の前にいるのは黒スーツにサングラスと言う、おおよそお近づきなりたくないような雰囲気の二人組。

片方は少し癖のある茶髪に薄めの茶色のサングラスをかけ、シャツのボタンもいくつか開けてるちょっと軽そうな男で、
もう一人は対照的に癖のない長い黒髪を一つで括り、表情の読み取りにくい濃いめの黒いサングラス、そして白いマフラー(?)を巻いた男の人。

でも、歳は二人とも私とそんなに変わらないんじゃないかなぁ……という感じ。




「あの……それで、父にはいったい何の用事が…?」

恐る恐る尋ねてみる。なんとなくだが嫌な予感は否めない。

そして……


「ん?ああ、言ってなかったっけ?僕らはさ君のお父さんに……お金貸しちゃってるんだよね」

予感は見事的中してしまった……




「お、お金って…そんな話何も……」

「……借用書ならここにある」

慌てる私にそう言ってマフラーの人が、借用書を見せてくれた。そこにはまぎれもなく父の字で、父の名前が記されている。

「ね?言った通りでしょ?でも実は期限がとっくに来てるんだよねぇ〜」

チャラい(感じの)人が、さっきから何が楽しいのかニコニコと笑いながら言う。
未だにお父さんが借金なんて信じられないけど……だからと言って今の状態じゃどうすることもできない。



「いくら…いくらなんですか……?」

とりあえず、まだ信用できそうなマフラーの人に聞いてみる。
チャラい(略)人の方は信じてはいけないと本能が言っている気がする……


「………一億だ」



…?



……



………






「一億!?」



「あはははは!本当に知らなかったんだ!今のすっごくいい顔してたよ〜」

「………止めろ、総司」



頭の中が真っ白になってしまった。

が、


「おい、あんた。もう一度聞くが本当に父親の居場所を知らないんだな?」

マフラーの人の言葉で現実に引き戻されてしまう。



「っ…知りません!本当に知らないんです!!」

父の行方も気になるが、いったい一億なんていったい何に使ったんだろう…と、そればかりが頭を占める。
父は温厚な人だし、賭け事に手を出したとも考えられない。
いったいどうして………そして何処へ行ってしまったのか………


「ふぅん?じゃ、どうやってお金を返すの?」

混乱の絶頂にいる私に、チャラい人が実に楽しそうに問う。
こんな場じゃなかったら一発位殴ってしまいたい……

「どうやってと聞かれても……。父は行方不明ですし…今家にあるお金もそろそろ……」

父は私名義の通帳に必要なお金を振り込んでくれていた。…しかしそれも今や滞っている……
だいたい一億なんてお金、簡単に用意できるはずもない。

「へぇ、それは大変!……でもねぇ、僕等もお仕事なんだよ。払えないなら………体で返してもらうしかないかなぁ?」

ニヤリと真っ黒い笑みを浮かべ、私に近づいてくるその人に、思わず声にならない悲鳴をあげた。

「っ…!」



ゴスン

「っ…痛たいじゃないか!一君!」

「馬鹿な真似は止めろ。お前が捕まるのは構わないが、うちの組まで潰れたらどうする」

「冗談だよ。じょーだん!てか、僕が捕まるのはいいって酷くない?」

「冗談に聞こえる冗談を言え」


漫才のような掛け合いをする二人を前に私は呆然としていた。


「あ、ごめんね?ちょっとからかい過ぎちゃったかな?大丈夫だよ。こんな真昼間から襲ったりしないって」

マフラーの人にどつかれた頭を撫でながら、悪戯を叱られた子供のような(反省は無い)無邪気な笑みで謝るチャラい人。
と言うか、全然安心できない言葉が含まれてるような……



「………安心しろ。あんたのことは上に意見を仰ぐ」

「上?」

チャラい人の言葉に溜め息を吐いてから、青ざめる私に若干優しげな声でマフラーの人が言った。

この人たちより上の人?……てか、さっき「組」とか言ってたよね…やっぱりその筋の人ですか…(泣)
だけど、このままよりはましかもしれない。マフラーの人はともかく……あっちは危険な匂いしかしない…

そんなことを悶々と考えていると、マフラーの人に同意するようにチャラい人が頷いた。


「ま、確かに綱道さんが捕まらなかったんだししょうがないか。でもさ君、安心しない方がいいよ?」

「え?」



「僕等の上はもっとヤバい……鬼がいるからね?」



ケラケラと笑う彼の言葉に…血の気が引く音がする。
そうだ。どっちにしてもこの人たちは私のような一般市民には危険な存在……


「……とにかく一緒に来てもらおうか。逃げようとは思うな。……死にたくなければな」


追いうちの如く掛けられた言葉に、もはや私の日常は消えてなくなったのだと知った。





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初薄桜鬼パロ!…まさかのヤーサン物語(笑)
でもちーちゃんの立ち位置があんまり変わらない…
彼らのイメージイラストはそのうち雫に描いてもらおう。
ちなみに武器のイメージは沖田が拳銃、一ちゃんがドス(爆)

1月29日 風舞 葉