「な、なんですか…今の叫び声は…」
「んー。左之さん達がもう捕まっちゃったのかな?」
「……てか、どうして付いてくるんですか沖田さん」
「酷いなぁ。僕等は二人で二人じゃないか」
「……見捨てる気満々ですね」
〜3〜
沖田と千鶴の二人は廊下を移動中だった。
「……それで、何処で落したんですか…」
「そんなの覚えてたらこんなことにならないよ」
「………」
あははと笑う沖田に千鶴は脱力した。
とにかく、土方の句帳と自分の写真は探し出さなければならない。特に後者は。
そう心の中で誓う千鶴を余所に、天気がいいなぁなどと呑気なことを言っている沖田。
「沖田さん!探す気があるんですか!?」
「うーん…どうだろ?」
「どうって…」
探す気無いなこの人。
「もういいです……私は一人で探します」
「あ、待ってよ千鶴ちゃん。実はもうちょっとで思い出せそうなんだよね…」
「え!」
「だからさ。僕が思い出す手伝いをして欲しいんだけど」
そう言った沖田は千鶴の手を取ってニッコリと笑った。
「あの…こんなところで何を…」
「だって、普通の場所じゃいつ土方さんが来るかわからないじゃないか」
「だからって…」
千鶴が沖田に連れられてやってきたのは普段滅多に近づく人のいない物置部屋だった。
「そう言えば知ってる?この部屋にはお化けがでるらしいよ?」
「なっ!?」
「なんでも夜になると女のすすり泣く声が……」
「や、やめてください!沖田さん!!」
涙目になる千鶴に、ごめんごめんと笑って頭を撫でた。
「っ…///…そ、それよりも早く落とした場所を思い出してください!」
「うーん…それなんだけど……」
そう言うと沖田が千鶴ににじり寄る。
その様子に嫌なものを感じて寄られた分だけ後ろに下がる千鶴。
「なんで逃げるの?」
「沖田さんが近づいてくるからです!!」
「ふーん?それじゃなんだか僕が鬼みたいだね」
ニヤリと笑い千鶴を追い詰めていく沖田に千鶴は冷や汗まで出てくる。
よくよく考えれば沖田とこんな場所で二人っきり。
逃げようもない。
「お、沖田さん?」
「千鶴ちゃん……捕まえた」
そう言うと沖田は千鶴を腕の中に閉じ込めた。
「な…!!!」
「うん。イイ抱き心地w」
「おおおお沖田さん!?」
「千鶴ちゃん、おが多すぎ」
ククっと肩を震わせる沖田に千鶴の混乱は絶頂に上る。
もはやショート寸前…と言うところまで来たとき、
「千鶴…無事か」
物置の襖を勢いよく開けたのは斎藤だった。
「さささささ斎藤さん!!!!」
「だから千鶴ちゃん、さが多いってば」
斎藤の登場にも全く驚く様子もなく笑う沖田の腕の中で懸命にもがく千鶴。
それをみた斎藤は眉間にしわを寄せた。
「……何をやっている。総司」
「何って見て分からない?千鶴ちゃんと逢引中w」
「ああああああ逢引!?」
焦る千鶴に余裕の沖田。
これだけで状況の把握はたやすい。
「……千鶴を離せ。嫌がっている」
「え?そんなことないよね?」
「むぐ…!?」
聞いておいて千鶴の口をふさぐ沖田。
それを見た斎藤はさすがに沖田から千鶴を引き放そうと物置に乗り込んだ。が、
「一君、早くその襖閉めて。早く!」
「…?」
切羽詰まったような物言いの沖田に、若干不信を持ちながらも言われたとおりに襖を閉めた。
これでいいのかと沖田の方を見れば口に指をあてて声を出すなと合図を送ってきた。
「……?」
なんなんだと斎藤と千鶴の二人は顔を見合わせたが、次の瞬間その原因がわかった。
「総司がこっちに来たってのは本当か!」
それは鬼副長の怒鳴り声だった。
「……なにゆえ俺まで隠れねばならん」
「一君も共犯じゃないか。それに僕が見つかればずっと一緒にいた千鶴ちゃんも怒られちゃうよ?」
「……お前」
千鶴を人質にするつもりか。とう視線で問いかければ。
利用できるものはなんだってと、視線が返ってきた。
「ふぐぅ…」
「あ、ごめんね。千鶴ちゃん」
口を押さえたままだったのを思い出した沖田が千鶴から手を離した。
「ふぁ…苦しかった…」
「ごめんごめん。でも土方さんに見つかったらまずいでしょ?」
「まずいのはお前だけだ」
「そうですよ!ちゃんと事情を説明して謝ってきてください!」
「やだよ。あの人に頭を下げるなくらいなら千鶴ちゃんと何処かに逃げ出した方がいい」
「千鶴を巻き込むな」
ため息混じりの斎藤の言葉も全く聞いていない沖田はうんと一人頷いて。
「よし、善は急げって言うし千鶴ちゃん行こうか」
「は?」
「…総司…」
「なんなら一君も行く?たまには三人で出かけるのもいいかもね」
「沖田さん……」
「総司……」
そんなに怒られるのがいやなのか。
そんなに謝るのがいやなのか。
呆れかえる二人にクスリと笑ったのは沖田だった。
「大丈夫だよ。今日の昼と夜の見回りも平隊員の訓練もみんなやってくれるはずだからね」
その言葉に二人は首をかしげた。
「だから行こう?一君もね」
そう言って千鶴の手を引いて部屋を出る沖田。
そして少々ためらったが千鶴のことが気になるので付いていく斎藤。
結局彼らが屯所に帰ってきたのは夕方。
土方に叱られはしたものの……句帳の話は全く無かった。
「どういうことなんですか?いい加減教えてください!」
「うーん…ま、千鶴ちゃんならいいかな。…実はね、一君今日非番だったんだよ」
「え…そうだったんですか?」
「うん。でも彼全然休もうとしないでしょ?だから屯所からちょっと引っ張り出してみようかなぁと」
「…?じゃあ土方さんの句帳は?」
「落としたって言うのは嘘。ま、盗んだのはホントだけどね。それにチョイチョイっと左之さんや、新八さん、平助の告げ口を入れといて…あとこの後一君と君と三人で出かけますって書いといたんだ」
「告げ口…?」
「うん。だって今日は僕仕事ちゃんと入ってたし。代わってって言って代わってくれるとは思ってないし」
「……じゃあ鬼ごっこ云々ってそのために…」
「あはは。何千鶴ちゃんホントに鬼ごっこしたかったの?」
「……。そう言えば、私の写真って…」
「あれも嘘だよ。そう言えば皆乗ってくると思って。特に一君とか」
「斎藤さんが…ですか?」
「彼責任感強いからね。それに単独で動いてたでしょ?あれ、きっと君の写真探してくれてたんだよ」
「……斎藤さん…///」
「ま、そんな事だろうと思ってわざとあんなところに君を連れ込んだわけなんだけど」
「……あれも作戦ですか…」
「一君は番犬だから。でもま、あのままでも僕は一向に構わなかったんだけど?」
「…どういう意味ですか!!」
「あはは。また遊ぼうね?千鶴ちゃん」
「……今度はその計画を始めから話してください。そしたら協力だってしますから…」
「それじゃおもしろくないじゃないか。でも…そうだね。今度は二人で……遊ぼうか?」
「…!?」
もどる
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誰落ちだよ
沖田は一ちゃん大好きなんだね☆(オイ
と言っても気まぐれですが…(主にあの三人に対しての嫌がらせ&土方への嫌がらせ)
こうして千鶴は沖田の共犯者にへの道を歩んで行く……(爆
2月8日 風舞 葉