「おーい、ちづ…」

「永倉さん、大丈夫ですか?」

「これくらい唾付けときゃ治るって」

「駄目ですよ。ちゃんと手当てしないと!」

千鶴は……あれだ。
ちょっと優しすぎるんじゃないかと思う。

いや、あれだぜ?
そういうとこがまた可愛いというか。なんか天女?つーの?
優しいし?あったけーし?もうお日さまみたいでそういうとこが好きなんだけどな。
って、俺なに言っちゃってんの?!

「平助君?」

気づけば目の前に千鶴がいた。

「うわ!?」

まんまるで大きな目が俺の顔を覗き込む。
なんでもないとニ、三歩下がれば千鶴がその分前に進む。

「ちょっ、千鶴!?」

「平助君……大丈夫?顔が赤いよ?」

伸びてくる白い手。
綺麗だなぁ。俺のと同じ手だとは思えない。

その手が俺の額に触れる。

「だ、大丈夫だって!」

慌てて離れるけどまだ心配そうに見る千鶴。
ちゃんと分かってるぜ?俺が特別なんじゃないって。
千鶴は優しい。すんげ―優しい。
だから………

「ホントに?」

「ホントホント!」

「そう?何かして欲しいことがあったら言ってね?」

何か……って。

「え……じゃあ…」

首を傾げる千鶴も可愛いなぁ。って違う。

「お、俺以外に優しくすんのやめてくんねぇ!?」

へ?と鳩が豆鉄砲食らったような顔をする千鶴。
って、やべっ。俺何言ってんの!?

「うっ……悪い!忘れてくれ!」

もう俺、何言っちゃってんの!!
特別なわけじゃないって言い聞かせたばっかじゃん!?
千鶴のことになると俺、ホント馬鹿になる。
こんなとこ左之さんとかに見られたら一生からかわれる!
てか、何?俺、ホントなんでこんなガキなの!?

「平助君……」

困ったような顔の千鶴。
ああー!そんな顔させたかったわけじゃないんだ!
自己嫌悪で頭を抱える俺に千鶴はそっと手を取って……

「やっぱり気分が悪いのね!?部屋で寝てた方がいいよ!」

「え?」

戸惑う俺を部屋まで引っ張って行って布団を引いて、ニッコリと有無を言わさぬ笑顔で寝ろと言われた。
なんだろ?嬉しいような、悲しいような……

「千鶴…俺ホントに…」

「ちゃんと寝て、早く元気になってね?それまで私、そばにいるから」

そばに……

ああ。うん。なんか……

「……だったら、いいかな…」


あ、でも頼むから俺以外にはこんなことしないでほしい。
……なんて言えないか…まだ。





〜…少しばかり、優しすぎる〜




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ルート前、羅刹前…かな?
平ちゃんは片思いして墓穴掘って項垂れてばいいと思う。(ファンに殺されるぞ)