「………」

「千鶴、お茶」

「あ、はーい」

「…………なぁ…」

「早くしてよ。相変わらずトロくさいな」

「ご、ごめんなさい…」

「………だから…


  なんでお前がここに平然と居座ってんの!?南雲薫ーー!!!!」







奥様は新選組(by藤堂平助)







「何?文句でもあるの?」

「あるに決まってんだろ!」

奥さんはカンカンだった。
その原因は旦那さんの双子の兄、南雲薫その人。

それは奥さんが買い物に出かけている間に入り込んだらしく……帰ってみれば夫は家政夫のごとく使われていた。


「へ、平助君……」

困った顔で彼女をなだめる千鶴だったが、千鶴自身も薫の行動が疑問だった。
彼は自分達の結婚に反対していた。

それどころか……


「お前……今度は何企んでんだよ!」

そう、薫は以前千鶴を取り戻すために新選組を潰そうとした。
その取り戻そうとした千鶴を使ってまで……

「別に…何も企んでなんかないよ。ただ結婚なんて平和ボケした弟の様子を見に来ただけ」

「平和ボケって……」

彼は千鶴とは別の家に引き取られ、しかもそこは新選組とは別の裏組織だった。
そこで彼は捜し続けていた。親の会社を倒産させ、それだけに飽き足らず……殺した犯人を。
その事実を千鶴が知ったのはずいぶん最近のことだった。

「お前……もう千鶴には近づかないって約束しただろ!?」

そして彼は見つけた。新選組と言う存在を。
……もちろんそれは彼の所属していた組の流した真っ赤な嘘だったが、彼は新選組を敵とみなした。
そして彼等と共に行動する弟にまで……憎しみの刃を向けた。

「……」

「平助君……私を心配してくれるのは嬉しいよ。…でも薫は…」

千鶴は薫に酷い傷を負わされた。肉体的な意味だけではない。精神的にもだ。
それでも、

「……兄貴だから…か?」

それでも千鶴にとって今や最後の肉親なのだ。

「………」

「……別にあんたに許可をもらう必要なんて無いだろ?」

そう言って薫は平助を睨みつけた。

「なっ!?」


「千鶴、もうさっさとこんな奴と別れちまえよ」


「薫!?」

そう言うと不貞腐れたようにソッポ向く薫。

「大体、お前は千鶴に相応しくない」

「ちょ、薫!?」

行き成り何を言い出すのか。と慌てる千鶴。

「な、なんだよ!俺のどこが千鶴に相応しくないって…」

「全て。存在全てが問題外」

全否定。

「なっ!?」

別に誰に何を言われようが千鶴の隣を誰かに譲る気はないが……さすがに千鶴そっくりの薫に言われば気づ付く。
思った以上のダメージに言葉が出ない奥さん。

その時だった。



「平助君は駄目なんかじゃありません!!!」



普段は大人しい千鶴が大声を張り上げた。
それに驚いたのは薫だけではなかった。

「ち、千鶴?」

「平助君はすっごくいい方です!可愛いし頑張り屋さんだし……どっちかっていえば私が釣り合ってないよ…」

最後の方は消え入りそうな声で……思わず、

「そんなことねぇって!千鶴は俺の自慢の夫だって!!」

全力で否定していた。


「平助君……



薫、平助君をこれ以上侮辱するなら私が許さない」


千鶴が薫に向き直る。

「……何?お前が俺に勝てるとでも思ってるの?何にもできないくせに」

「……確かに何もできないよ。でも…大切な人は自分の手で守るから」

「千鶴…」

千鶴は彼女を背中に隠すように薫とにらみ合った。



「…………ホント馬鹿だね。お前は」


ポツリと薫が零すように言った。

「何!?」

それにいい加減我慢の限界だった奥さんが千鶴の後ろから出てきて食ってかかろうとする。
が、

「いや、お前等……か。もういいよ。飽きたから帰る」

そう言うと早々と玄関に向かう薫。
一瞬、あまりの切り替えに呆然としてしまったが慌てて薫を追いかける二人。

「薫!?」

「お、おい!!」

扉を開け、出て行こうとする薫は一度だけ振り向いた。
そして、

「………バーカ」


捨て台詞を残して去っていった。



「……なんだったんだ?いったい……」

「……さぁ…?」




ちなみに



「千鶴……ありがとな。かばってくれて…///」

「……平助君…!!」(抱きつき)

「うわ!?ちょっ千鶴!?」

「平助君、大好きです!!」

「おわ!?ちょっ…うお!?///」

(暗転/笑)









二人の家を出てからもう一度、薫は振り返った。
温かな家、温かな家族。
それは遠い昔に無くしたもの。

だけど、双子の弟は……それを今また手に入れた。


「………」


しばらく弟の家を見ていたが、薫は静かに踵を返し夜の闇へと消えていった。




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寂しい兄ちゃん、新婚の家に押し入り(オイ
あれ?平助の話なのに主に兄ちゃんの話だぜ?何故?

何がさせたかったかと言うと、千鶴に守らせたかった(守ってねぇ…)

そして一番好きなセリフは「バーカ」(爆)
兄ちゃん…完全ツンデレだよ……
ちなみに兄ちゃん、二人が庇いあってる辺りからすでに帰りたくなってる(笑)

……千鶴…平助を押し倒すなんて…大胆w(ヤメロ