「ただいま」
そう言ってドアを開けると……
「お帰り」
玄関に正座で座っている奥さんと一番に目が合う。
……これは毎日のことだ。
奥様は新選組(by斎藤一)
「……あの…」
「なんだ?」
千鶴の鞄を受け取りながら首を傾げる奥さん。
彼女はとても真面目だと知っていた。
知っていたが……
「一さん…別に玄関で待っていなくてもいいですよ?」
彼女はいつも玄関で出迎えてくれる。
それ自体に何の不満もなければ逆に嬉しいことこの上ないのだが……
「……なぜだ」
「えっと…玄関で出迎えてくれるのは嬉しいです!一さんの顔が一番に見れて幸せです!」
「……」
千鶴の言葉にふいっと顔をそむける奥さん。
その耳は赤い。
「でも……こんなこと聞くのはあれですけど……いつから待ってるんですか?」
そう。そこが問題なのだ。
いつ帰っても玄関にいる。残業、飲み会、そんな帰宅時間が不定期な時でさえ玄関で座って待っている。
……まさかずっとそこに座って待っているんじゃと千鶴が思うのも無理はない。
「……別に待ってはいない」
「え?」
いや、千鶴が帰ってくるのを待ってはいるが……と言葉を付け加えてから彼女は説明した。
「あんたの気配はこの家の周囲500メートルに入ればわかる」
「そ、そんなのがわかるんですか!?」
「……あたりまえだ」
さも当然と言う彼女は新選組紅一点の幹部だった人だ。
たしかに……この人ならできそうだと千鶴は思ったが、
「……一さん凄すぎです…」
「…………冗談に決まっているだろう」
それだけ言うとスタスタと家の中に入って行ってしまう奥さん。
「は、一さん!?」
信じられないと目を見開く千鶴に一度だけ立ち止まり、振り向いた。
そしてめったに見られない満面の笑顔で言った。
「疲れた夫を迎えるのが妻の役目だ」
その一言に千鶴は
『この人には一生敵わないなぁ』と思った。
ちなみに
「それで…ホントはどうして私が帰ってくるのがわかるんですか?」
「……教えない」
「ええー!!!」
「(千鶴はどうして気づかないんだろうか?帰宅路がこの家から見えることに……)」
「……一さんの意地悪…」
「(……そう言うところが可愛いんだがな……////)」
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原因がわかった。
ちーちゃんが積極的だからだ(笑)
ちなみに斎藤さんはずーっと窓に張り付いてたら可愛い……w