〜ひな祭り小説1≪土方≫〜
「土方さん、立派な雛人形ですね」
「ああ」
今日はひな祭りということで特別に着物で出かけることが許された。
最後まで反対していた土方さんだったけど……
『俺から離れないなら……許してやる』
そう言って許してくれた。
「お前は持ってねぇのか?」
「江戸の家に小さいのが。父様が買ってくれて……毎年二人でお祝いしたんです」
懐かしい思いで。
でも今年は……
「……悪かったな。余計なこと聞いたか?」
ばつの悪そうな顔をして謝る土方さんに全力で首を振った。
「そんなことないです!たしかに今年は父様とお祝いはできませんけど……でも……」
貴方と過ごせるから……
「でもなんだ?」
恥ずかしくてそれ以上言えないのに、わかってて聞てくる。
その証拠にすごく意地悪そうな顔をしてる。
「い、言いません!」
「言わないとわからねぇだろ」
「わからないなら、わからないでかまいません!」
意地になって、顔を見られたくなくて早足で歩く。
すると後ろから堪えるような笑い声が聞こえて余計に顔が赤くなった。
「意地悪……」
「なんか言ったか?」
「土方さん、最近沖田さんに似てきたんじゃないですか?」
「気色の悪いことを言うな」
振り向けば心底嫌そうな顔。
「そこまで嫌がらなくても……」
「アイツと一緒にだけはされたくねぇ」
そう言って眉間にしわを寄せる土方さんに思わず、
「ふふっ…あはははっ!」
父様、私は今年のひな祭りも幸せに過ごしています……
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