「うっわ……めっちゃくちゃ降ってるじゃん……」
まじかよ〜と空を睨むが止む気配はない。
「しょうがない。濡れて帰っか…」
そう自分に気合を入れて走り出した。
なんて言っても今日は見たい番組があるのだ。
こんなところで油を売っている暇はない。
と、門を出てすぐに見知った後姿を発見した。それは……
「千鶴!!」
雪村千鶴。最近うちのクラスの、しかも隣の席に引っ越してきた女の子。
なんだかんだで生徒会のお茶汲みがかりになってしまった面白い子だ。
「あ、平助君!」
「悪い、入れてくれないか!?」
駆け寄ってダメもとで頼んでみるとあっさり「いいよ」と返ってきた。
「サンキュー」
助かったーと礼を言えば、千鶴はハンカチまで貸してくれた。
こういうとこやっぱ女の子だなぁ…ってまぎれもなく女なんだけど……
「でもびっくりだな。夜からとか言ってたのによ」
「うん。でも昼くらいから暗かったよね」
お天気おねーさんの馬鹿やろーと叫ぶとクスクス笑われた。
「笑うなよな…自分は傘持ってきてたからって……」
不貞腐れて言うと千鶴はちょっと困ったように首を振った。
「違うの。これ沖田先輩のなの」
「え?沖田って…あの総司の!?」
よくよく見ればこの傘は男物で、彼女が持つには少し大きすぎる。
「うん。さっき昇降口で困ってたら……」
『君、傘忘れたの?馬鹿じゃない?今日雨降るって言ってたじゃないか』
「うわっ嫌なやつー」
「あはは…でも…」
『ならこれ、勝手に持っていきなよ。僕はまだ何本か置いてあるし』
「って」
「勝手にって……」
貸すにしてももっと言い方があるだろうに。
「うん。でも私にこの傘を押し付けた後すぐにいなくなっちゃったから……」
「ふーん」
にしてもアイツが人に親切にするなんて珍しい。
「明日何かお礼しないと……」
「いいんじゃね?勝手に使えって言ってたんだろ?」
「そうはいかないよ」
そう言って笑う千鶴。
律儀だなぁと思う反面、俺も傘持ってきてたら千鶴にお礼してもらえたのかな。なんて考えてしまって慌てて頭を振った。
「平助君?」
「なんでもない!」
「そう?あ、私もうすぐだから……平助君、この傘使って?」
「え?いいよ!俺濡れても風邪ひかないし!」
新ぱっつあんあたりが聞けば『平助は馬鹿だからな』と笑って頷きやがるだろう……
「ダメ!」
そう言って無理やり握らされた傘。
そして、
「じゃ、また明日ね!!」
「お、おい!!」
駆けて行く後姿。
「……あー……」
なんで、じゃあ送ってくとか言えないんだろ…俺は……
いっそ濡れて帰りたい気分になった……と空を仰げば、まだ晴間は見えず。
翌日
「沖田先輩、傘ありがとうございました!」
「ああ…別にいいけど…コホ…」
「先輩!?風邪ですか?」
「別に大したことないよ。ちょっと喉を傷めただけ。それより傘は?」
「……それが…」
「あ、総司!これ借りてたぜ?」
「平助?何で平助がそれ持ってるわけ?千鶴ちゃんに貸したんだけど」
「あ、あの…」
「昨日一緒に入れてもらったんだよ。俺も傘忘れたから」
「………」
「沖田先輩?」
「総司?」
「………もう君には貸さない」
「……どうして怒られたんでしょう…」
「……さぁ?」
「総司、お前昨日何で傘さしてなかったんだ」
「……土方先輩には…コホコホ…関係ありま…せん」
「関係無いってお前……朝は傘持ってたじゃねぇか!それに風邪引きやすいから傘は絶対忘れないようにしてんだろお前」
「……なんでそんなこと知ってるんですか」
「お前…何年の付き合いだと……」
「あーあー土方先輩が五月蝿いから体調が悪くなりました。保健室行ってきます」
「あ、おい、てめぇ!」
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雨にぬれました。
夕方からだという天気予報を信じた結果、ぬれました。
そんな帰り道、小学生の男の子と女の子の微笑ましいシーンを見かけて思いついたお話。
学パロでそのうちHPにシリーズを作る予定。
土方さん、左之さん、新ぱっつあんは三年生
斎藤さん、沖田さん二年生
平助君に千鶴ちゃんは一年生
我ら生徒会執行部!な学パロです。(ちなみに顧問は近藤さんw)
土方さんと沖田は昔からの知り合いです。
ちなみに小学生のシーンは傘に入れてもらうとこ。
可愛かった…w